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2018年3月
日刊工業新聞編集員 松木 喬 氏にきく
―「脱炭素」から「地方創生」まで 2018年度の環境ビジネスと環境経営
昨年末に開催されたCOP23では「脱石炭」を目指すイニシアチブが拍手喝采で迎えられる一方、日本は「石炭火力発電の推進国」と強調され、世界に存在感を示すことができなかった。太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの利用も立ち遅れつつあるが、反面、いち早く「CO2ゼロ」を宣言する企業や、風力発電を地方創生の起爆剤とする自治体も出てきている。本記事では、そんな環境の現場を丹念に取材、報道する日刊工業新聞の松木喬編集委員に、企業における環境問題の現状と2018年度に向けた環境経営のあり方について語っていただいた。
【環境管理|2018年3月号|Vol.54 No.3 より】(聞き手:本誌編集部/写真提供:松木 喬)
||| 目 次 ||| |
「CO2 削減」から「CO2 ゼロ」へ── 高まる日本企業の危機感
─── まずは地球温暖化問題の現況についてお聞かせください。
松木:温暖化問題が最近大きく注目されたのは、パリ協定が採択された2015年12月です。それ以前、つまりCOP21が始まる前までは、日本の2030年目標は諸外国と比べて高いのか低いのか、CO2を何パーセント減らすべきなのかというのが論点だったのですが、COP21後は突然「CO2ゼロ」という流れになりました。現地で参加した企業の方からも「脱炭素へのうねりが凄い、止めようがない」、「危機感を持った」という話を聞きました。世界は一気に「脱炭素」へ舵を切ってしまったわけです。
─── パリ協定では5 年サイクルで各国の削減目標を強化するグローバル・ストックテイクが行われます。初回が2018 年、促進的対話(タラノア対話)で始まり、20年を待たずにパリ協定が動き出します。
松木:2016年5月に日本政府は「2050年80%削減」を宣言しましたが、実際にどのようにやるかはまだ決まっていない状況です。ところが企業はそれに先駆けて高い長期目標を次々と発表しています。リコーは昨年4月に2050年CO2ゼロ、5月には富士通、7月にはNECも同じ目標を発表しました(図1)。リコー、積水ハウス、アスクルは、将来事業で利用する電力をすべて再生可能エネルギーに転換する国際イニシアチブ「RE100」に加盟しています。
─── 電気・電子産業は再生可能エネルギーに関して積極的です。
松木:AppleやGoogleなどのIT企業の大手はほとんどがRE100に加盟しています。だから富士通やNECは同じIT企業としてCO2ゼロを目指さざるを得ないのでしょう。
─── 脱炭素にはインフラなど大変な資金が必要になると思いますが……。
松木:なぜ企業が事業の足かせになるような目標を立てるのかというと、いずれ大幅なCO2排出削減が必要となるなら、先に手を打っておこう考えたからです。
数パーセントの削減よりも、もっと大胆な削減を社内に促し、厳しい削減目標が課せられても事業を継続できるようにするためです。削減が手遅れになった競合を引き離すこともできます。また環境に対する企業ブランドのイメージを高める戦略もあります。例えば、気候変動の影響を受けやすい途上国に商品を売り込む場合、企業がすべて再生可能エネルギーを利用しているというのは大きなPRになります。それが一つの販売戦略であり、ブランドイメージを高めることが経営戦略に一致するわけです。再生可能エネルギーを100%にする、CO2をゼロにするというのは非常にわかりやすいメッセージです。利害関係者に「環境先進企業だ」と伝えることによってライバル企業との差別化が図れる。再生可能エネルギーや脱炭素は非常に戦略的なテーマなのです。
(『「日本=石炭=環境後進国」化石燃料批判と環境金融の動き』 へ続く〔続きはPDFファイルにて、ご覧ください。〕)
【環境管理|2018年3月号|Vol.54 No.3】
下記よりPDFファイルをダウンロードのうえ、ご覧ください。
(本インタビュー全編ご覧いただけます。)
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