環境管理バックナンバー 2009年 3月号

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2009年3月号 特集:水ビジネス

<特集>

我が国の水ビジネスの現状と展望
中村吉明 経済産業省環境指導室長
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 世界の人口増加、工業化・都市化の進展に加え、環境汚染により水源の確保が困難になったことなどにより、世界の水の需給ギャップが大きくなっている。一方で、水をビジネスとして捉える動きが顕在化しており、市場規模も2025年には100兆円に達すると予測されている。以上を踏まえ、本稿では、我が国の水ビジネスの現状、課題を分析した上で、我が国企業の水ビジネスの今後の戦略を考える。

水ビジネスの海外展開への期待
大垣眞一郎 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授
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 日本の水ビジネスを国際的に展開し、有力な世界規模の産業に発展させることを目標に、産業競争力懇談会(COCN)に「水処理と水資源の有効活用技術プロジェクト」が設置され、その最終報告書「急拡大する世界水ビジネス市場へのアプローチ」が2008年3月に発表された。その報告書に基づき、世界の多様な水事情の地域ごとの分析、水ビジネスの展開方策、その具体的な活動案、ならびに、国内諸機関との連携の体制案、などを紹介する。

「海外水循環システム協議会」の設立について
伊藤真実 株式会社日立プラントテクノロジー研究開発本部開発部部長
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 人口増加や地球温暖化により世界的に水不足が懸念されており,それに伴い世界の水ビジネスも拡大していくと予想されている。そのためには,エンジニアリングや建設だけでなく日本の企業にとって未知の管理,運営へとビジネス領域を拡大していかなければならない。そこで,異業種が集まり「オールジャパン」体制で海外市場に参入することとし「海外水循環システム協議会」を立ち上げた。本協議会は,産官学の連携をとりながら,市場調査,技術開発,モデル事業を推進し,海外事業展開のための基盤づくりを行う。

国内外上下水道事業の官民連携の動向について
水谷重夫 三菱商事株式会社インベーション事業グループ新エネルギー・環境事業本部 環境・水事業ユニットマネジャー
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 海外水道の民営化は,1990年代前半から始まった英仏2か国の水事業会社が独占していた第一期から,21世紀に入り,仏2強に対応して世界の電機大手・米国GEと独国Siemensが膜処理メーカーを買収して水ビジネスに参入し,第二期となった。そして2000年代後半を迎え,米仏に対抗して,自国内の水道市場において官民連携が促進され,民間水事業会社を国家戦略で育成してきたスペイン,シンガポール,韓国の新興第三国民間水道事業会社の台頭が始まり,第三期を迎えている。わが国は,今こそ官民連携の促進により海外のウォーターメジャーに勝てる水事業会社の育成と,世界に先駆けた21世紀に相応しい水循環システムの創生に向けて立ち上がらなければならない。

塩水淡水化と下廃水再利用ビジネスの現状と展望
栗原 優 東レ株式会社顧問
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 技術は、「持続可能な水源確保」の一つとして,塩水を水源とし真水を得る海水淡水化の技術が挙げられる。中東では,加熱蒸発後に凝縮・回収する方法(蒸発法)が主流であったが、近年、経済性に優れることから逆浸透膜を利用した海水淡水化方式の導入が顕著になった。さらに、下廃水を再生・再利用する省エネルギープロセスには、有機物による汚れ(ファウリング)に強い低ファウリングRO膜が不可欠である。除去対象の異なる種々の分離膜を統合して利用するインテグレーテッド・メンブレンシステム(IMS)は、海水淡水化、上水、下廃水再利用の各分野での適用がますます広がっていく。

<総説>

中小塗装現場におけるVOCの排出実態
小林 悟 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門主任研究員、浦田昭雄 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門研究員、竹内浩士 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理技術研究部門主幹研究員
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 大気汚染防止法の一部改正に伴い、揮発性有機化合物(VOC)排出抑制制度が制定され、法規制と事業者の自主的取組とのベストミックスの手法により、効率的にVOC排出抑制を目指すことになった。筆者らは、特にVOC排出量の多い工業塗装分野、印刷分野に注目し、零細企業・中小企業等の自主的取組が円滑に推進されるように、特にVOC排出抑制対策技術を検討する際の最も重要と考えられるVOC排出源の実態調査、並びにこの実態調査に基づいて、中小排出源にも導入可能な対策技術の検討を行っている。本稿では、平成19年度に行われた工業塗装分野での塗装ブース、乾燥装置の排出ガス中の全炭素連続濃度変化、成分構成、排風量の測定等を実施した結果を報告する。

日本および米国におけるナノリスク規制-その背景
小林 剛 環境医学情報センター・代表
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 ナノテクノロジーに対する規制は,これまで各国とも政府のガイドラインや企業の自主管理による取り組みに委ねられてきたが,米国環境保護庁(US EPA)は,2008年1月より実施していたナノ企業による自主報告制度の「ナノスケール物質スチュワードシッププログラム」(NMSP: Nanoscale Materials Stewardship Program)では実効が挙がらないとの判断に加えて,ナノ物質の有害性研究の成果の蓄積により,同年10月,ナノ物質の代表的製品のカーボンナノチューブ(CNT)を,ついに有害物質規制法(TSCA:Toxic Substances Control Act)の「新規」化学物質と指定し,メーカーに対して正式届出の規制を課した。さらに11月には,ナノ粒子類に「重要新規使用規則」(SNUR)を適用,商業目的で製造・輸入・加工する場合には,少なくともその90日前にEPAへの届出を義務づけ,2009年4月の施行を決定した。これを契機に,今後,米国が先鞭をつけたナノ規制の動向は世界的に波及すると推測される。

<シリーズ>

【環境法の新潮流61】社会的許容リスクの考え方
奥 真美 首都大学東京都市教養学部都市政策コース教授
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 社会的許容リスクの考え方が成り立つためには,許容され得る環境リスクのレベルと管理方法を決定し,実行していくプロセスにおいて,参加する主体の多様性,意思決定に必要かつ十分な情報の開示・交流・共有,透明かつ公正な意思決定,選択肢の多様性といった要素が担保される必要がある。そのうえで,最終的に社会的許容リスクのレベルならびにそれへの対応策について判断するのは政策決定者もしくは行政である。当該判断は,予防的な観点に立って果敢になされるべきであるが,一方において,違法性の疑いを排除するためにも,柔軟かつ順応的な措置の見直し,三面関係もしくは多体問題的関係性の考慮が必要である。

【実践マテリアルフローコスト会計42】日本電気化学株式会社におけるマテリアルフローコスト会計の導入―京都MFCA研究会実証トライアル事業
岡田 斎 株式会社 環境管理会計研究所、北田皓嗣 神戸大学大学院経営学研究科 博士課程
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 京都府では,企業活動における環境負荷低減と経営力強化,また,マテリアルフローコスト会計(MFCA)に関する支援人材の育成,中小企業が活用しやすい取組手法の検討等を目的としたMFCA実証トライアル事業を行なっている。平成20年度は日本電気化学株式会社にMFCAを導入した。計測の負荷の軽減を考慮して主材料に限定した計測を試みた結果,データの収集が当初予想していたほどは大変ではなく,MFCA分析によりロスの見える化に成功した。この実証トライアル事業により,中小企業が比較的多い京都府における京都版MFCAの構築に向けた一つの方向性を示すことができた。

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