環境管理バックナンバー 2010年 6月号

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2010年6月号 特集:ISO環境マネジメント関連規格の最新動向

<特集>

ISO 19011マネジメントシステム監査指針の改定動向
亀山嘉和 財団法人日本適合性認定協会 認定センター参与副センター長(CB担当)(ISO TC 176エキスパート)
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 ISO 19011マネジメントシステム監査指針の改訂が(DIS:Draft for international standard)版回付の段階となり,改訂の概要が固まりつつある。現規格2002年版では,第1者,第2者,第3者認証審査を含めた監査を対象としていたが,第3者認証審査にかかわる要求事項は,ISO/IEC 17021‐2として制定が進んでいることから(現在最終国際規格案(FDIS:Final draft for international standard)の準備中),ISO 19011の改訂では,第3者認証審査は対象から外し,また,品質・環境以外のマネジメントシステム規格にも対応させることとした。さらに,監査にかかわるリスク,監査手法としての遠隔地監査(remote audit)も考慮している。本稿は,ISO 19011の改訂内容の概略を中心に説明し,ISO/IEC 17021‐2との関連事項についても解説を加える。

ISO14021タイプⅡ環境ラベル表示
水谷 広 日本大学大学院生物資源科学研究科教授
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 ISO 14021の改訂作業が最終段階に入っている。規格本体の変更はないものの,補足事項として一般用語6つ(バイオマス,温室効果ガス,ライフサイクルを通した温室効果ガスの排出,オフセット,持続可能な開発,トレーサビリティ),環境主張シンボル2点(ポイ捨て禁止,分別促進),材料表示シンボル4種(アルミニウム,鉄,ガラス,プラスチック),環境主張4項目(再生可能,再生可能エネルギー,持続可能,温室効果ガス排出に関する主張)が加わる。我が国に強みがあるヒートポンプは,新たな環境主張項目として規格に加えることを考えるべきである。

ISO 14045製品の環境効率評価―原則,要求事項およびガイドライン
芝池成人 パナソニック株式会社環境本部
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 製品やサービスの環境との調和性能を示す「環境効率」の標準化に関する議論がスタートした。日本では電機各社を中心に「環境効率」や「ファクターX」の開発が進められガイドラインも制定されており,今回の標準化においてはこれまでの成果を国際規格に結実させるとともに技術開発と市場との有意なコミュニケーション・ツールとして位置づける目的がある。「環境効率」は製品の戦略的なマーケティングに活用できるマネジメント指標であり,我々が追及してきた考え方が環境配慮製品の評価基準として反映されるよう産官学共同で活動を展開している。

ISO14046(ウォーターフットプリント)の動向
伊坪徳宏 東京都市大学環境情報学部准教授
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 世界的な水不足が懸念される中,製品のライフサイクルに使用された水資源の消費量を算定するウォーターフットプリント(WF)が注目されており、2009年には国際規格化が決定され,2011年末までに国際規格が発行される予定である。規格はLCAの国際規格の枠組みを踏襲したものになるが,ISO14025やISO14067-2との整合性が議論になるであろう。ヨーロッパではすでに多くの検討が行われているが,その中で日本の研究活動をいかにしてISOに持ち上げていくのかが重要な課題となる。

ISO14067カーボンフットプリント―カーボンフットプリントの規格と我が国の制度
経済産業省産業技術環境局認証課
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 2008年6月にコロンビアで開催されたISO/TC 207(環境マネジメント)会合において,我が国はイギリス,ドイツ,アメリカと共同でカーボンフットプリントの国際標準化作業開始の提案(NWIP:New Work Item Proposal)を行った。この提案について同年11月にNWIPの投票が行われ,規格開発が了承された。これを受け,TC207/SC7(GHGマネジメント)/WG2にて具体的な検討が開始されることとなった。その後,LCA規格(ISO 14040s),環境ラベル規格(ISO 14020s),GHG規格(ISO 14060s)に関する各国の専門家が継続的に議論を続け,2010年5月末現在,委員会原案(Comiittee Draft for comments)段階まで議論が進められている。次回会合は,本年7月にメキシコで開催されるISO/TC 207総会に併せて行われる予定であり,2011年末の規格発効の予定である。

日本が主導するISO14051の国際標準化の状況について
古川芳邦 日東電工株式会社ガバメントリレーション部サステナブル・マネジメント推進部長,立川 博巳 プロファームジャパン株式会社代表取締役社長
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 マテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting: MFCA)では,生産プロセスにおける投入物質のフローに基づき製品(良品)となった投入物質を「正の製品」,廃棄物となった物質を「負の製品」と捉え,正の製品及び負の製品を同等に価値評価する。この価値評価を通じて,負の製品コストを算出することで,生産プロセスにおけるムダを明らかにし, ムダの削減を促進する。この点で,MFCAは,環境負荷の低減とコストダウンの両立を達成するマネジメント・ツールである. 2000年からの経済産業省主導の下で日本におけるMFCAの導入,展開が拡大したことを背景に,環境マネジメントの国際標準(規格)を所轄するISO/TC207に対して,日本がMFCAの国際標準化の提案を2007年11月に実施し, ISO/TC207/WG8が創設された。当該WGは,ISO/TC207において日本が初めて議長・幹事のポジションを獲得したグループであり,TC207における日本の存在感を高める点においても,その期待・意義は極めて大きい.また, MFCAの国際標準であるISO14051は,ISO14001やその他のISO14000ファミリーを, 特に経済的側面を中心に相互補完する関係にある. ISO14051の規格策定について, 現時点で国際規格原案の作成が終了し, 2011年~2012年中の国際規格化を目指している段階である。

ISO50001の動向と省エネ法との比較
工藤博之 財団法人省エネルギーセンター国際ビジネス協力部長
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 ISO 50001「エネルギーマネジメントシステム」は,委員会原案 (CD)審議(2009年11月)を経て, 3月末に加盟国に国際規格原案(DIS)が提示され,2011年4月頃に成立する予定である。日本では,オイルショック以降30年にわたって「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)の下で産業界を中心に省エネの実績を挙げてきた経緯があり,今後ISO 50001認証を受ける場合には,可能な限り省エネ法と整合させて,企業負担を増やさないようにする必要がある。本稿では,省エネ法との対比の観点から,ISO 50001(DIS)の概要を示し,省エネ法に沿った管理手法がISO 50001でも使えるかなどについて述べる。

<シリーズ>

【環境法の新潮流76】EUにおける統合的汚染防止管理(IPPC)指令の見直し動向
奥 真美 首都大学東京・都市教養学部教授
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 1996年にEUで導入された統合的汚染防止管理(IPPC:Integrated Pollution Prevention and Control)指令(IPPC指令)に基づくしくみは,産業施設からの大気・水・土壌という複数の環境媒体に対する汚染物質の排出,廃棄物の発生,エネルギー効率,事故の未然防止措置,サイト閉鎖後の措置といった当該施設の環境パフォーマンス全体に係る要素について,ひとつの許可のもとで考慮しコントロールしようとするものである。このしくみの最大の特徴は,「利用可能な最善のテクニック」(BAT:Best Available Technique)を基準として産業施設に遵守を求める排出限界値を設定するところにあるが,実際のBATの見極めと採用においては問題も生じている。そこで,現在,IPPC指令の見直しが進められており,本稿ではその動向について紹介する。

【実践マテリアルフローコスト会計57】栗本コンクリート工業株式会社におけるマテリアルフローコスト会計の導入
岡田 斎 株式会社環境管理会計研究所上席研究員 博士(工学,経営学) 技術士
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 栗本コンクリート工業株式会社およびサプライチェーンを構成する2企業は,平成21年度経済産業省委託事業 サプライチェーン省資源化連携促進事業に採択され,3企業チームにマテリアルフローコスト会計が導入された。遠心力を利用して製造するコンクリート管をヒューム管と呼ぶが,同社ではその製造工程で,年間約2,000トンもの廃棄コンクリートが排出される。そこで,投入資源の歩留り向上,廃棄物削減とコストダウンを実現することを目的として活動を行ない,大きな成果をあげることができた。なお,ヒューム管製造工程にMFCAを適用した事例は,おそらく初めてである。

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