環境管理バックナンバー 2011年 8月号

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2011年8月号 特集:JEMAI平成22年度事業成果報告

<特集>

着々と準備される「中国企業環境監督員制度」―JICAプロジェクト(平成20〜22年度)
鶴崎克也 一般社団法人産業環境管理協会環境管理部門,竹下一彦 一般社団法人産業環境管理協会環境管理部門,小野憲仁 前・一般社団法人産業環境管理協会環境管理部門
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 平成18年,中国国家環境保護総局(以後,SEPAと記す)は,日本の「公害防止管理者制度」を参考にして「企業環境監督員制度」を構築することとし,独立行政法人国際協力機構(JICA)に,その推進のために2年間の協力を要請した。さらに,平成20年3月にSEPAから改組された環境保護部(MEP)は,「企業環境監督員制度施行準備」のために,3年間にわたる協力を求めた。JICAは,これらの要請に応えて,それぞれの専門家派遣業務を当協会に委託して実施した。その結果,中国において企業環境監督員資格認定のための試行研修が40数回にわたり実施され,数千に及ぶ工場に企業環境監督員が配置された。前半2ヵ年の業務については,これまで本誌において報告した。本稿では,後半3ヵ年にわたる業務の経過,成果及び今後の展望を報告する。

ベトナムにおける公害防止管理者制度の構築支援に関する調査
池田 茂 一般社団法人産業環境管理協会環境管理部門環境技術センター所長,大野香代 一般社団法人産業環境管理協会環境管理部門環境技術センター技術室室長
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 日本とベトナムの政策対話において,ベトナム側からハノイ市を対象とする公害防止管理者制度構築について支援の要請があった。これを受け,3回にわたりハノイを訪問し,制度構築支援を行うための事前調査を行った。調査では,政府機関に対するヒアリングや現地工場等の実態調査を行い,環境管理の実態や環境汚染状況等を調査するとともに,今後の制度構築に向けたグランドデザインを取りまとめた。本稿ではその概要を紹介する。

公害防止管理者等研修シリーズの開催結果報告 ―公害防止管理者等リフレッシュ研修会・環境担当者向け廃棄物研修コース
柏木勇人 一般社団法人産業環境管理協会環境管理部門環境人材開発センター
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 公害防止管理者制度の導入から本年で40年を迎えるが,ここ数年環境関連法に対する違反事例が相次ぎ,事業者の環境管理の現状が今再び危惧されている。当協会では,平成20年度より,公害防止管理者等の環境管理担当者の再教育を目的とした「公害防止管理者等リフレッシュ研修会(再教育)」(以下,リフレッシュ研修会)を実施している。昨年度は新たに事業所の廃棄物担当者向けに「環境担当者向け廃棄物研修コース」を開講し,リフレッシュ研修会と併せて全国で28回開催した。本稿では,昨年度の両研修の実施状況とともに再教育制度の歴史や両研修の今後の展望についてまとめることとする。

化学物質用途情報サプライチェーン伝達スキーム円滑化調査
出石忠彦 一般社団法人産業環境管理協会化学物質総合管理部門化学物質管理情報センター技術参与
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 中小企業の経営者層に対して,化学物質管理の重要性を啓発するための端的でわかりやすいテキストを作成した。これを用いて経営層が参加するセミナー等に押しかけ,全国8地域で計51回,6,502名に講演を行った。これと連動して,化学物質管理の初心者に対し,最低限必要な実務ノウハウを習得してもらうためのセミナーを全国6地域で計10回,570名の受講者に対して行った。また国内企業2社に協力を仰ぎ,国内サプライヤー35社,海外サプライヤー38社について調査を行い,事業者間で製品含有化学物質情報を効率的に共有・伝達するためのモデルプランを作成した。

サプライチェーン省資源化連携促進事業の成果報告
平田国男 一般社団法人産業環境管理協会製品環境部門製品LCA事業推進センターエコデザイン事業推進室室長
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(一社)産業環境管理協会では,平成20 年度より経済産業省の委託を受け,ものづくり企業で構成されるサプライチェーン企業チームの連携による省資源化への取り組みを支援する「サプライチェーン省資源化連携促進事業」に取り組んできた。本事業においては,マテリアルフローコスト会計(MFCA)などの専門家を企業チームに派遣し,各企業の生産ラインにおけるロスの見える化および改善ポイントの抽出,企業秘密を隠した形での情報共有,およびサプライチェーン全体でのロスの削減につながる改善策の提案を行う。平成22年度は8 企業チームが参加し,平成20年度からの3年間の累計,58企業チームについて様々な業種および製品分野における多くの事例を収集することができ,これらから得られた知見をモデル化し,ガイダンスにまとめることができた。

ISO/TC207国際標準化の動向について
三宅麻美 一般社団法人産業環境管理協会一般社団法人産業環境管理協会製品環境情報事業センター製品環境情報国際室
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 持続可能な発展と,これを実現するためのシステムやツールの開発が強く求められる社会情勢の中,環境マネジメント関連の国際標準化作業への積極的な参加がこれまでにも増して重要視されるようになってきた。当事業は現在も続く継続事業であるため,本稿においては,昨年度の事業成果を踏まえつつも,主に最新情報を提供することとし,本年6月下旬から7月上旬にかけて行われたISO/TC207(環境管理)オスロ総会における諸規格の開発状況に関する情報を中心に,一般社団法人産業環境管理協会が国内審議団体を務める,環境ラベル,環境パフォーマンス評価,ライフサイクルアセスメント,温室効果ガスマネジメント及び関連活動,及びマテリアルフローコスト会計(MFCA)に係る標準化に関し,その動向を紹介する

平成22年度経済産業省委託 「平成22年度カーボンフットプリント関連データの収集・整備事業」成果報告
白石 靖 一般社団法人産業環境管理協会製品環境部門製品環境情報事業センター技術主幹
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 産業環境管理協会では,平成21年度より推進しているカーボンフットプリント(CFP)制度試行事業におけるCFP算定に用いる計算の基礎となるデータベースを拡充していくことを目的として,経済産業省委託「CFP関連データの収集・整備事業」を実施した。本事業の実施内容は,主に,1)CO2換算量原単位データの作成・収集および共通原単位データベースの保守・拡充,2)アジア諸国等における関連データの収集・整備,3)海外の主要国政府・機関等とのデータベースの協調および国際会議の開催,の3項目である。本事業を通して,1,000件を超える原単位データを有する共通原単位データベースを公開し,またアジア諸国および欧米におけるライフサイクルアセスメント(LCA)/CFPデータベースの現状調査と国際的な動向との連携を図るための基礎を築くことができた。

CO2の見える化 カーボンフットプリント制度について
加治知恵 一般社団法人産業環境管理協会製品環境部門製品環境情報事業センターカーボンフットプリント推進チーム
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 2009年度に開始した「カーボンフットプリント制度試行事業」は2年目を終了し,認定PCRは57件,CFPマーク使用許諾製品は314件となった。2010年度は,「単位量あたり」「機能あたり」という「表示の多様化」,「広範囲PCRを用いた実証事業」等の新たな取り組み・検討を行った。カーボンフットプリントを検討しているISO14067の規格化の時期が2012年度後半にずれこむなど国際規格としてはまだ固まっていない部分もあるが,2011年度で国の事業としての「カーボンフットプリント制度試行事業」が終了となるため,今年度中に3年間の事業のとりまとめを行う予定である。

<総説>

公害紛争処理法の現代的運用試論(後編)―韓国環境紛争処理法制を題材に
宇津木達郎 総務省公害等調整委員会
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 本稿は,世界の環境紛争処理制度(以下,EDR)の範とされる公害紛争処理法(以下,JEDR)の利点を確認し,制度利用が活性状況にある大韓民国環境紛争調整法(以下,KEDR)との比較から,現代の公害紛争事情により適合した制度運用及び利用(特にこの1~2年で利用が急増した原因裁定制度利用)のあり方を提言する試みである。前編では,本稿の目的・意義・アプローチからJEDRの概論,日韓の公害実態及びEDRの比較,KEDRの特徴抽出までを解説した。引き続き後編では,KEDR利用活性の背景分析,KEDRから学んだJEDRの解決策を述べ,公害紛争処理制度のより良い運用に向けて日韓交流が果たした大きな成果として総括したい。

土壌汚染対策法施行規則の改正と企業活動における留意点
広瀬彰一 株式会社イー・アール・エス環境部副部長
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 土壌汚染対策法に関しては昨年4月に改正法の施行によって,法,施行令及び施行規則等が大きく改正されたばかりであるが,今年7月8日に再度施行規則等が改正され,併せて改正法の施行通知も改正された。今回の施行規則の改正内容は概ね規制緩和と受け取ることができるものであるが,施行通知の改正内容において,運用面での変更とはいえ注意が必要なものが含まれている。また,今回の施行規則の改正で土壌汚染対策法の全体像が更に複雑化した。規制の受け手である企業としては,改正に伴って新設された調査の特例や細分化された区域(特例区域及び管理区域)が,自社の敷地にどのように適用されるかについてあらかじめ充分に検討することが,CSRやCRE(企業不動産)戦略,更に企業のリスク管理の観点から望ましいものと考える。

<シリーズ>

【実践マテリアルフローコスト会計71】医療機関へのマテリアルフローコスト会計の導入―血液透析の事例
天野輝芳 諏訪東京理科大学経営情報学部教授,松井 豊 まついe-クリニック院長
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 本稿では,血液透析にマテリアルフローコスト会計(MFCA)を導入し,透析中の水の流れに着目し,コスト構造とプロセスの無駄を可視化した。その結果,RO水に溶解した透析剤とRO水製造時のロスが大きいことが判明した。装置の仕様やシステムの見直すことが重要であり,メーカーの技術開発に負うところが大きい。このように,MFCAは,患者と医療機関の満足度を高める競争優位の源泉を洗い出す有効な分析ツールであることを検証した。

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